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アリスの時間

退屈な毎日
ちくたくちくたく
時間は刻まれる
時計ウサギが逃げ出す前に
君に会いに行こう


にんやりチェシ猫に挨拶して
ひらり
お庭の柵を飛び越えて
真っ直ぐ伸びるこの道を
君がキャンパス広げるあの丘へ


御伽噺のお姫様
待ってるだけで王子様に会えるだなんて
そんなのなんだかつまらなくない?
ハンプティ・ダンプティが聞いたらなんて言うんだろう?
ちょっと寄り道美味しい紅茶


いかれ帽子屋せかして湯を沸かし
ヤマネのお嬢さんにスコーンを貰うの
三月ウサギのお兄さん
しっかり葉っぱの開いた紅茶揺らさずそっとポットへね?
君の大好きなダージリン


沢山詰めたバスケットは重いけど
君の喜ぶ顔が大好きだから
気弱な庭師のトランプさんに
そっと抜け道
密かな裏道通してもらうの


おっとっと気難しいハートの女王様
村一番のお小言おばさん
見つからないように
そーとそーと抜き足差し足忍び足
こっそり通ってごめんなさい


出あった頃を思い出す
君の隣でポーンの様に初めはカチコチ
でもナイトに助けられて女王様になるって決めたの
君の隣に並ぶ女王様に
8番目まであと少し


小さな鏡で身づくろい
野に咲く花を髪に添え
弾む息を整えて優雅に言うわ
旦那様お茶にしませんか?
優しい木漏れ日のティーパーティ
君の優しい微笑が今日もあたしを幸せにする



大変大変!
時計ウサギが逃げ出した
でも気にしない
帰ってくるまで一緒に待つの
小さなアリスが戻るまで
大冒険を終えるまで




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テーゼ

うだるような陽射し
干した布団
ただそのまま忘れていた
何気ない日常



ふと気付けば夕闇が迫っていた
慌てて
ベランダへ駆け出す
迫り来る逢ヶ魔時
ふと…
空を見上げた
金色に輝く雲はその刹那
色を還る
優しい色へ…
天上の調べ
先人の偉大な音楽家達ならば
何と聞いただろう
未来の画家ならば何と描いただろう



その一瞬の物語を−−


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水のない河

ザンザンと雨が降り注ぐ
揺らいで愉しんでいた陽炎は姿を消し
街は濃い雨色に塗り変わる
しょぼくれていた若葉は我が意を得たりとしなやかに胸を張る



足元には逆さまの世界
天の落とす涙に楽しそうにその姿を揺らす
あるいは泣かないでと哀しんでいる
傘の花のロンド



街の外れにある河は
地面から溢れた水
流れ込んだ水を
その身で受け止める



それでも尚、河に水が流れる事はない
カラカラに渇いている
山から授かった
ほんの少しの清き流れだけを残して



その清き流れもいずれは
たくさんの流れに身を投じ
その本質を変えてしまうのだらうか
小さな疑念を胸に隠し
今日も河は小さな流れを守る
その渇きが癒えるその日まで



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霧の中

霧は嫌いだ。
心がざわざわする。
緑の山々が灰色に覆われる。
ゆらゆら立ち込める霧は不安定なお前だぞと自然に言われているようで。

もちろん勝手な思い込みであるとわかっていても。
その不透明さは自分と対峙させる。
浄化させてもさせても残る心の澱。
それをくっきりと浮かび上がらせるのだ。
そうして自分の不安定さを思い知らされる。

急に足元の地面が液化してしまったかのように。
社会の小さな無くなっても困らないような駒である事。
己の存在意義を問いたくなる。
ああ、せめて霧が晴れてくれたら…
曇りの霧は嫌い。


立ち込めるゆらゆらと立ち込める霧が嫌い。


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お弁当

何を見てるの?
何を感じているの?
真っ直ぐ前を見つめるその瞳には何が見えているの?
あなたと彼を繋ぐ絆があまりに深くて真剣で
聞くことさえ出来ない
ドア越しに聞いてしまった計画
危ないと叫びたいのに喉の奥が焼け付くように痛い
反対なんてできないすべては私達の為
できる事はただ怪我をしないでと祈る事



木立の間から聞こえる声は
熱を帯びて
打ち合う合間に飛び交う怒声は
思うように動かぬ自らを叱咤する声
どきどき高まる動悸を
弾む息と一緒に抑えるように
深呼吸して落ち着ける
くったいないいつもの笑顔とは違う顔
一瞬のその顔に
それだけで心臓は跳ね上がる



出来上がったばかりのランチを籠に詰め
あなたの笑顔が見たいから
私は今日も木立の間を駆け抜けて
口いっぱいにほお張りながら
彼と私と三人で軽口を叩き合う
いつまでもこの時が続けばいいのに
思いとは裏腹に時間は刻々と過ぎてゆく
あなたも彼も昨日とは違う
笑顔だけは昨日のまま



鳥になってあなたを追ってゆきたい
どこまでもどこまでも
それが叶わぬとわかっているから
せめて心から祈ります
神様どうか二人を守ってくださいと
あなたの進む道に幸あれと


愛情込めたお弁当
最後のお弁当
笑顔であなたを送る出せるように
笑顔であなたを送り出せるように
もう二度と会えないとわかっているから
また会えるよね?
わざと聞きました
あなたも彼も困った笑顔で「いつかと」
その気持ちが私の心を癒します
優しい嘘



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